オートクロスオーバー

オートクロスオーバー

穴熊だけが持つ特殊能力"終盤に王手がかからない"と同様に、伝奇作品だけが持つ特殊能力が存在する。それがオートクロスオーバーだ。

あらかじめ正しい歴史を念頭に置いてオレ歴史を進める伝奇作品は、はじめから多元宇宙・平行世界としてデザインされた存在だ。そこでは圧倒的な拠って立つプロトタイプ、共通理解となる"正しい世界"が夢見られている。あらゆる伝奇作品の登場人物は正しい世界から派生して改変された者たちであり、共通でありながら共通でない、有名だけど誰も知らない誰かなのである。

共通の作品を描くことで作家性の違いを際立たせることがクロスオーバーの楽しみであるなら、伝奇作品とはそのような面白さが常時満ち溢れる世界だ。あらゆる登場人物は共通世界からオレ世界にインスタンシエイトされた時点で独自の血肉を具え、抜きがたい作家の業に彩られて無名の有名人として活躍してゆく。彼らは平行世界の誰かに似ていてもいいし、似ていなくてもいい。そのような模倣と反逆のダイナミズムをこそ、"面白い"と申すのでございます。わたしの中の宗匠もそう言っている

宗匠はそんなこと言わない」? まあ、そうかもね。それで?