2005-10-14
■ [読書]『剣鬼喇嘛仏』(山田風太郎、ちくま文庫)

剣鬼喇嘛仏―山田風太郎忍法帖短篇全集〈12〉 (ちくま文庫)
- 作者: 山田風太郎
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2005/03
- メディア: 文庫
- クリック: 2回
- Amazon.co.jpで詳細を見る
「山田風太郎忍法帖短篇全集の最終巻。出たときに買ってあったんですが、様々な優先度制御の果てに今読みました。」
「最後の忍法帖短篇全集ということで、最終話『開化の忍者』が明治時代の御庭番を扱っていたのが印象的でした。これは忍法帖短篇全集をコンプリートしたならそのまま明治小説全集に流れろというメッセージなのか。ちくま文庫戦略恐るべし。」
- 各作品について。
- やはり表題作『剣鬼喇嘛仏』が凄すぎる。
- どう凄いかは各自ググってくれと言いたいところですが、イメージ検索ではかばかしい結果が出なかったので『柳生十兵衛死す(1)』(山田風太郎、石川賢)より引用。これが噂の剣鬼喇嘛仏だ。
- 最近漫画への引用癖がひどくて困りものです。デジカメで撮ってトリミングしてコントラスト調整するのも結構面倒なので、どこかで漫画のコマだけを引用できる Web サービスなんて始めないですかね。
- ことほどさように石川賢時空ではフリークス・オブ・フリークスと化していた喇嘛仏ですが、原作は意外と真面目な話で驚愕。
- そもそも喇嘛仏はかの細川忠興の次男であり、筋金入りのいいとこのボンボンであります。それがなぜあんな事態に成り果てたかというと、それは剣に狂って宮本武蔵を超えたいと熱望した結果です。またそれか。最近読んでる小説や漫画はこういう自分の妄念の強さで重力崩壊を起こしたような奴ばっかり出てくるので楽しくて仕方ないです。
- 本当にこんな奴が 4 冊に 3 冊の割合で出てくるんですよ。読んでるものが偏りすぎ。
- ちなみに 4 冊とは『烈願記』(平田弘史)と『老ヴォールの惑星』(小川一水)と『駿河城御前試合』(南條範夫)と『剣鬼喇嘛仏』です。
- 本当にこんな奴が 4 冊に 3 冊の割合で出てくるんですよ。読んでるものが偏りすぎ。
- 表紙のこの人はやっぱり喇嘛仏なのだろうか。喇嘛仏というとあの形状しか思い浮かばなくてひどく違和感があるので、内部的にこれを喇嘛仏ステイメンと呼称することにしました。
- 喇嘛仏オーキスと合体して完全体喇嘛仏、いわば喇嘛仏デンドロビウムになるということで。
- そう考えると『剣鬼喇嘛仏』のラストは感慨深い。ネタに触れるので詳しくは書きませんが、ステイメンと RX-78 とガンダム Mk II が揃って号泣している様を幻視したと言えば分かる人には分かっていただけることでしょう。
- 喇嘛仏オーキスと合体して完全体喇嘛仏、いわば喇嘛仏デンドロビウムになるということで。
- そもそも喇嘛仏はかの細川忠興の次男であり、筋金入りのいいとこのボンボンであります。それがなぜあんな事態に成り果てたかというと、それは剣に狂って宮本武蔵を超えたいと熱望した結果です。またそれか。最近読んでる小説や漫画はこういう自分の妄念の強さで重力崩壊を起こしたような奴ばっかり出てくるので楽しくて仕方ないです。
- どう凄いかは各自ググってくれと言いたいところですが、イメージ検索ではかばかしい結果が出なかったので『柳生十兵衛死す(1)』(山田風太郎、石川賢)より引用。これが噂の剣鬼喇嘛仏だ。
- 『伊賀の散歩者』はとんでもなく変な小説でした。山風先生が江戸川乱歩をリスペクトし倒した忍者小説と書けばどれだけおかしいか分かっていただけることでしょう。
- というかですね、明らかにやりすぎ。禿頭の武士、平井歩左衛門(姉はおらん、二人合わせておらん歩左衛門)が「大犯罪をやりたい」という己の趣味を追及してカガミジゴクってイッスンボウシってニンゲンイスってアカイヘヤるという言語を絶するストーリーの上、しまいには「こういうリスペクトシーンなんだけど語る余白がないので詳しくは江戸川乱歩の名作『○○』を読んでくれ」って地の文に書いてあるんですよ。
- 解説で江戸川乱歩が山田風太郎に対して言った言葉が取り上げられていて、曰く、「山田くんは何をやるかわからん男だ」。至言です。何をするか分からない相手ほど恐ろしく、しかも面白いものはありません。
- ヒント : 「許斐剛は何をするか分からない」
- 解説で江戸川乱歩が山田風太郎に対して言った言葉が取り上げられていて、曰く、「山田くんは何をやるかわからん男だ」。至言です。何をするか分からない相手ほど恐ろしく、しかも面白いものはありません。
- というかですね、明らかにやりすぎ。禿頭の武士、平井歩左衛門(姉はおらん、二人合わせておらん歩左衛門)が「大犯罪をやりたい」という己の趣味を追及してカガミジゴクってイッスンボウシってニンゲンイスってアカイヘヤるという言語を絶するストーリーの上、しまいには「こういうリスペクトシーンなんだけど語る余白がないので詳しくは江戸川乱歩の名作『○○』を読んでくれ」って地の文に書いてあるんですよ。
- 『羅妖の秀康』も相当アレなお話。
- あらすじ。結城秀康は梅毒で鼻がなかった。そこへ現れた人体形成忍者。じゃあ他の人の肉体から一部をもらって鼻を作ろう!
- どの一部をもらうかって? 昨日今日山風作品を読み始めた素人みたいなとぼけ方はなしにしようじゃあありませんか。
- まあ、悲劇ですよ。うん、悲劇。(目を逸らしながら)
- あらすじ。結城秀康は梅毒で鼻がなかった。そこへ現れた人体形成忍者。じゃあ他の人の肉体から一部をもらって鼻を作ろう!
- やはり表題作『剣鬼喇嘛仏』が凄すぎる。
「さて、これで山風先生の忍法帖短篇全集を全て読み終えたわけですが、まとめ。そうねえ。思考実験って言葉は君が思うより遥かに深くて昏いってことしかないんじゃないの。
ある忍者が人体と怪異の極まるところを追求した結果生まれる忍術、それを史実に投入するとどうなるか。その思考実験の産物が全十二巻の忍法帖短篇全集ですが、まずはこれだけの多様性を生み出した山田風太郎先生に敬意を表さざるを得ない。その創作態度には暖炉の前で人形を組み合わせて新たなゆでホールドを研究するロビンマスクのような偏執性と変質性を感じます。ならば、その生い立ち上多様性を愛すべく決定付けられた CHAOS の住人たるインターネッターどもが、多様性の父である山田風太郎や筒井康隆をどうして否定できようか。」
「たとえその多様性の 9 割 5 分が行っちゃいけない方向を包囲する立看板であろうとも?」
「あろうとも。じゃあ君は『ブシドーブレード』を否定できるとでも言うつもりかね。」
「まさか。」
「 id:nand さんの生霊を追い払って個人的な好みを言うと、初期忍法帖の張り詰めた悲劇話の方が読んでいて心地いいですよ。主人公が下手に何とかできそうな忍法を体得しているせいで敵も主人も想い人も一人残らず死ぬ類の。
後半の淫術全開な話の中にもそういった悲劇性はあるんですが、いかんせん淫術全開なのでどうしても笑いたくて笑いたくて仕方ないんですよね。それこそ『剣鬼喇嘛仏』とか。」
「それと、意外に剣豪ものとしても通用する話が多かったので、『世界の奇剣・怪剣』全集を編むときはぜひ第一巻・山田風太郎集としてまとめていただきたいところです。」