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2006-11-05

[]『メイド諸君!(1)』(きづきあきら+サトウナンキ、 GUM COMICS PLUS) 『メイド諸君!(1)』(きづきあきら+サトウナンキ、 GUM COMICS PLUS) - イン殺 を含むブックマーク はてなブックマーク - 『メイド諸君!(1)』(きづきあきら+サトウナンキ、 GUM COMICS PLUS) - イン殺

メイド諸君! (1) (ガムコミックスプラス)

メイド諸君! (1) (ガムコミックスプラス)

「好きなんですよ、きづきあきら。もっと注目されてほしいので、ここは一つきづきあきら作品のよさを説明しようと思うわけですが、その前に少し『ファンタジーは愛されている』という話をしましょう。」

「言うまでもありませんが、全てのフィクションは嘘です。虚言です。空虚な作りごとでありデタラメです。我々はそれを百も承知の上でフィクションを消費します。なぜならフィクションからは現実では得られない何かを得られるからです。フィクションが内包する現実より少し優れた世界を、ここでは仮に"ファンタジー"と呼びます。」

「一般に"萌え"と称される作品群は、このファンタジーを少なからず読者に与えてくれます。可愛い女の子やキャラクターが群舞する現実とはかけ離れた居心地のいい世界がそこにはあります。萌えは平和で優しい心の楽園です。
しかし、当然のことですが、その世界は全くの嘘っぱちです。萌えキャラたちはファンタジーの住人であり、現実生活の助けにはなってくれません。ファンタジーは何の責任も取れないのです。我々はそのことを十二分に知った上で、なおもファンタジーを求めます。ファンタジーが好きだからです。
秋葉原のメイド喫茶を訪れるオタクの人は、そこで働いているメイドさんが時給 850 円で雇われた生身の女の子であり、『ご主人様』という言葉は居酒屋の『はいよろこんで』に等しい単なる営業上の定型句でしかなく、その空間がまったきフィクションの産物であることをイヤというほど自覚しているでしょう。しかし人はメイド喫茶に行きます。そこにはファンタジーがあるからです。」

「さて、あるファンタジーが勢力を持ち始めると、必ずその世界観をズラそうとするベクトルが発生します。パロディやアンチテーゼと呼ばれるものですね。それは愛ゆえに生まれることもあれば、憎しみから生まれることもありますが、本流であるファンタジーを無効化したり、一部だけ肥大化させたりし、元のファンタジーを愛する人から愛されたり憎まれたりします。基本的に、元の流れを真っ向から叩き潰そうとするベクトルは嫌われると思っていいでしょう。正面衝突は強い抵抗を呼ぶからです。みんなはファンタジーが好きなのであって、ファンタジーが無惨に砕け散る様が好きなわけじゃないのです。少なくともキティちゃん好きはキティちゃんがリストカットする話なんて読みたかないでしょう。それは社会性や残虐さという意味で元のキティちゃんより優れているかもしれませんが、求められているファンタジーではないのです。」

「ここまでを踏まえた上で。
あるところに一匹のファンタジーがいました。彼女は見た目上明らかに萌えでした。その容貌猫よりも萌え、フリルのメイド服舞うが如し。しかし、彼女には若干の悪い癖がありました。どうしても少しだけ、ファンタジーの域から外れようとするのです。彼女自身はどこまで行ってもファンタジーでしかなく、明らかに自らファンタジーであろうとしているくせに。
彼女のそうした態度は、ファンタジーを愛する人たちから大層嫌われました。みんなは言うことを聞くファンタジーが好きだったのです。隙を見ては現実世界との狭間に足をひっかけて、『ほらほら、こっちにはこんなにいやなげんじつがあるよ?』と誘いかけてくるような行儀の悪いファンタジーは大嫌いなのです。彼女がなまじ萌える外見をしていただけに、その素行の悪さはひどくみんなの癇に障りました。ファンタジーはファンタジーらしくしていればいいのに。」

「以上のたとえ話で何となく分かっていただけたでしょうか。そんな淑女ぶっているけど最高のサイコさんなファンタジーが好きなんです。妹萌えをグーで殴った『モン・スール』といい、居心地のいいオタクサークルをグーで殴った『ヨイコノミライ』といい、きづきあきら作品はどうしてもファンタジーに一仕事加えずにはいられないらしいんですよね。その溢れ出る劣情――敢えて劣情と呼ぶ――がいたく心に響きます。ファンタジーのファはファックのファですよ。」

「『メイド諸君!』はぜひメイド好きの人に読んでいただきたいんですが、生憎と手足の二三本失っても構わないくらいメイドを愛している友人に心当たりがないので*1、この場を借りて体験者を募集します。どうなんでしょう。メイドが好きというのは、マナーのなってないご主人様が閉店後の通用口で待ってる話とか、メイド喫茶のサービスは法的に飲食店なのか風俗店なのかという話まで含めて好きなんでしょうか。」

参考

*1:というかそんな人は『エマ』の作者くらいしか思いつかない