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イン殺 RSSフィード

2009-01-28

[][]『バーバ・ヤガー(1)』(きづきあきら+サトウナンキ、 Media Factory MF コミックス) 『バーバ・ヤガー(1)』(きづきあきら+サトウナンキ、 Media Factory MF コミックス) - イン殺 を含むブックマーク はてなブックマーク - 『バーバ・ヤガー(1)』(きづきあきら+サトウナンキ、 Media Factory MF コミックス) - イン殺

「多視点型ミステリ。また面倒なものに手を染めたなあ。あとがきによるとストーリーを考えているのはもっぱらサトウナンキ先生だそうですが。」

「そういえば以前きづきあきら作品の読みが浅いと言われたこともあったので、浅いのはいつものことなので頭をかきながら恐縮するとしても、 xx が現時点できづき作品をどう見ているかについてはそろそろひとこと言っときます。」

「きづき作品を四字熟語で喩えるなら、おそらくそれは"説教強盗"ではないかと推測しています。創作動機と作品の消費のされ方を含めて。作者の意図を勝手に予想すると、どうもオタクが持っているファンタジーを力ずくで打ちのめして目を覚まさせたい、という欲求があるように見えます。思い込みかもしれませんが。」

「妹との恋、オタクサークル、メイド喫茶といった分かりやすくあざといテーマを選ぶ意図もそこにあるのではないかと思っていて、もちろん商業的に有利という面もあるでしょうが、まず読まれるために読者が馴染みやすい要素を散りばめているんじゃないでしょうか。その上で登場人物のプライドを剥ぎ取り、以って読者に妄想が妄想でしかないことを突きつける、というのがきづき作品の手口。
説教強盗の言うことは「お前が言うか」という点を除けば正論であって一面の筋は通っていますが、残念ながら強盗はどこまで行っても強盗なので、そうしたどぎつさが一部の人の眉をひそめさせるのは当然だろうし、そこが受け入れられなくてきづき作品を忌避する人もいるでしょう。友人にもいます。しかしまあ、一冊のマンガの毒で揺らぐ自意識というものが、いざ事に臨んだときに果たして頼るべき自意識であれるのかというのも疑問ではあり、読者にそういう毒への耐性を付けさせるべく先生は今日も作中という箱庭で登場人物に地獄を見せている、という解釈はどうでしょうか。名台詞を借りるなら"この程度で死ぬなら今死なせてやった方が幸せだ"とでも言いますか。そう考えると作品に見え隠れする真面目さというか、キャラクターが自分の考えで動いた結果、幸せになったりならなかったりする意志力の肯定とでもいうべき要素とも通底するように思えます。悪意といえば悪意、善意といえば善意。先生は本心から読者のためを思って真面目に創作している、というのが自分の想像というか妄想。そこから生まれた作品が実際に人の心をえぐるものであったことは素晴らしくも悲劇的でもあり喜劇的でもあり、何と言いますか、真に受肉したツンデレというのは正視に耐えるものではないのかな、と思いました*1。」

「という話は、そう解釈すると自分の中で筋が通るというだけで、間違っているかもしれませんよとエチケットペーパーを敷いておきます。作者本人もただ殴りたいだけなのかもしれないし、明確に理だけで割れる創作意欲というのも存在しないので、その点は曖昧です。また、読者が作者の意図を酌む必要もないので、実際に作品を読んで不快感を覚えるなり感動するなりは読者の責任においてやればよかろうとも思います。ただ xx の脳内ではそう考えた方がカッコいいので、今後はそう考えることにしました。いわゆる"いざというとき相手を殺しにかかる漆黒の意志"です。」

「ついでに一つ思いついた思考実験。例えばの話、きづき作品にショックを受けて自殺する読者が出て、それがニュースになったとしましょう。あなたの中のきづき先生は創作をやめるでしょうか?
やめないんじゃないかなあ、というのが xx の淡い期待交じりの予想です。」

「なお、話を二年ほど蒸し返して『ヨイコノミライ』感想(id:xx-internet:20061025:p2)のことを言うと、あれを書いたときにそこまで考えていたわけではなく、単に人の心に手を突っ込んで引っかき回そうとする悪意が自分にとって面白かったことと、かつその悪意がもっと世に広まってほしいと思ったために"痛い"という注目されそうな要素を前に出した感想にした、という面はあります。あれは自分の心の揺らぎを楽しむ作品である、という考えは変わりませんが。」

「『バーバ・ヤガー』の話に戻すと、人が何を思ってどういう意図で行動しているかは分からない、ということに加えて、意図を説明したから正直だとか真実であるとは限らない、という視点が好きです。あとがきにある"自分には分からない自分"ですね。純白や漆黒というのは仮想概念で、全てはグレーであるというか。」

樽いっぱいの虚言にコップ一杯の事実を混ぜれば、それは樽いっぱいの虚言である。樽いっぱいの事実にコップ一杯の虚言を混ぜれば、それは樽いっぱいの虚言である。

虚言 - xx

「意志と行動のつながりは外部から見えないがゆえに必ずと言っていいほど誤解を生むし、かといって自分で意識している行動原理が必ずしも本当だとは限らない。そこに虚構が混ざると事態は収集がつかないほど混乱する。そんな漫画をきづき先生が描くのは、何と言いますか、因果ですね。」

*1:関係ないが『百舌谷さん逆上する(2)』(isbn:9784063145465)のペーパーに書かれた「「このマンガがすごい2009」堂々の完全選考外!!! 得点ゼロ 追い風ゼロでも頑張るゾ!!」の文字に泣く。そそそそんな事は絶対ないぞ絶対ないからなコンチクショー! 褒めて褒めて褒めまくってやるからな!

TT2009/02/01 14:19きづきあきら先生からオタク要素を除くと、新井英樹先生になるという解釈でよろしいでしょうか。
そう言えば新井先生のコミックスが最近復刻されているので、xxさんの感想をお聞きしたいです。

xx-internetxx-internet2009/02/01 19:33『ヨイコノミライ』感想へのリンクが間違っていたので修正しました。ご指摘ありがとうございました。

> T さん
言われてみれば似たような動機を感じます。『宮本から君へ』は確か嫌がらせと明言されてましたね。
『『八月の光』『ひな』その他の短篇』は買ったので、余裕があればそのうち言及します。

祇尾祇尾2009/02/01 23:04私としては、きづきあきら先生は僕らの世紀末茶王が大好きな「ヤンデレ」ではないかと思っています。ツンデレはいくら「ツン」でも愛する人を爆殺したりはしません。しかしヤンデレにとってはそれこそ愛である場合が往々にしてあります。然るに、きづき先生にとっては作品によって臓腑を抉る行為こそ、「まさしく愛だ」ということなのではないかと、ドM的視点から申し上げます。
さて全く話は変わるのですが、「侍戦隊シンケンジャー」はご視聴予定ですか?日本剣術の戦隊だそうなので、劇場版の脚本は荒山先生謹製のVS柳生怪人編になるはずだと確信しております。

xx-internetxx-internet2009/02/02 07:32> 祇尾さん
ツンデレの手加減は信用ならない、というのが『百舌谷さん逆上する』(略称モギャ)を読んで得た見解ですが、祇尾さんがヤンデレと解釈することで幸せになれるのならそれに越したことはありません。
シンケンジャー。ブレイドブレイバーのバッタモンですか。戦闘員がみんな日本刀を持ってたら日曜の朝からとてもワンダフルな光景が展開されそうなので、とりあえず観てみます。

木村木村2009/02/02 07:33シンケンジャーは脚本が會川昇なら妖奇士みたいなディープな伝奇ネタをかましてくれたと思うんですが、會川さんは今年は仮面ライダー・ディケイドメインなのが残念。
……まぁディケイド自体がたいがいな企画なので楽しみなんです。

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