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イン殺 RSSフィード

2010-01-13

[]漫画ゴラク増刊『食漫』Vol.8の久住昌之無双について 漫画ゴラク増刊『食漫』Vol.8の久住昌之無双について - イン殺 を含むブックマーク はてなブックマーク - 漫画ゴラク増刊『食漫』Vol.8の久住昌之無双について - イン殺

「あんなに面白い『食漫』を読んでいる人がとても少ない、ということを書いた(id:xx-internet:20100105:p2)手前、『食漫』がどのくらいとんでもなくどうなのかを紹介せねばなるまいと思ったので、ここに記すことにします。ネタバレなしのつもり。」

「まず、普段から面白い『食漫』ですが、 Vol.8 の面白さは特に神がかっていたと言わざるを得ません。なぜか。それはみんな大好き『孤独のグルメ』でおなじみ久住昌之先生がとんでもなくはっちゃけていたからです。
普段から連載コラム『孤独の飲み飯』でその芳醇なこだわりといいますか、薀蓄といいますか、妄想といいますか、狂気といいますか、そういうものを剥き出しに発揮しておられる久住先生ですが、このコラムのヤバさについては後述。まず特別ゲスト読み切り『おでんの軍師』の話をしましょう。」

おでんの軍師 - 安いプライド重要ってジョンス・リーも言ってた

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「『かっこいいスキヤキ』(isbn:9784594025779)でおなじみ泉昌之名義。読み切りの主人公は『かっこいいスキヤキ』所収の『夜行』『最後の晩餐』でも知られるトレンチコートの男こと本郷幡*1。実に下らないことにプライドを賭けることで有名な彼は、当然おでんにも一家言を持っています。」

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「屋台の別の客にライバル意識を燃やし、注文のセンスで張り合う本郷。」

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「画像は「陣を敷いてみよ!!」だけ切り取るつもりでしたが、それとなく周辺のコマが見える方が面白いので、そのまま載せてみます。どうですかこの自意識バトル。舞台設定から敵の注文へのリアクションまで一手に引き受けるムーブ。戦闘の主体と解説者が一体化し勝手な自説を語りまくる様はまさに無双。『アイシールド21』で言うところの自分で持って走れるクォーターバックを連想するチート性能です。
いつか単行本に収録されたときのネタバレを防ぐため、この先については言及しませんが、こんなに面白い作品がごく一部の料理漫画好きの目にしか触れていないことは自分としても大変遺憾であります。そろそろ次の号が発売される『食漫』のバックナンバーを手に入れることが大変困難であることを考え合わせても、実に残念としか言いようがありません。いやあ、これを読めない久住昌之ファンは可哀想だなあ。」

孤独の飲み飯 - dream eater

「しかし久住昌之無双はここで終わらない。連載コラム『孤独の飲み飯』でも久住先生のテンションは下がらないどころか、むしろこちらの方が強烈にキマっているという恐ろしさ。」

ついに書かねばならない時がきた。

湯豆腐である。

いや、湯どうふ、と平仮名で表記したい。「豆腐」なんて豆が腐った食い物みたいで、あの白く神聖な食材に似合わない。

好きなんです。湯どうふが。この上なく。

「この書き出しのテンションを見たとき、それがしの中で連想されたのは「すべて女が悪い」でおなじみ隆慶一郎『死出の雪』、もしくは「おれはまだ兎派の存在など知らなかったから初めてイシダイッセイがヒロスエリョウコから石を投げつけられた時は驚いたというより衝撃を受けた。」から始まる津原泰水『聖戦の記録』*2でありました。どうでもいい話ですが。」

「そして久住先生はもう止まらない。ノンストッパブル。」

まず、おいしい豆腐を一丁用意して、あとは昆布と、ネギと。鰹節、醤油。以上。

もう俺はここまで来てるね。シンプルさが。ここまで洗練されてますよ。

白菜だ春菊だ、いらない。

シイタケだ、エノキだ、全然いらんね。

梅の花に切ったニンジン?馬鹿か、どシロウトが。お子様ランチでも食ってろ。

タラ?お前持って帰って食っていいよ(お前って誰だ)。

「先生それ『天食』*3で書いたネタの使い回しじゃないですか。ブレがないとも言うけど。」

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天食

天食

煮える前に、ネギを切っておこうや。鰹節を、できたら削ろうや、な、今日ぐらいパックはやめようや(なんのつもりだその口調は)。

「以前ヒレカツ定食をフランス料理に見立てて食す話*4を読んだときにも思いましたが、先生の妄想癖が前を向いて回ったときの旋回力というか、遠心力というか、とにかく一つところで高速に空回っている感じは特筆すべきものがあります。」

その筋にとっては豪華連載陣

「『食漫』の底力の恐ろしさはこれだけに留まりません。他にも料理漫画を愛するものにとってはどこかで見たような絵柄が満載でございます。連載作品のうち、自分が過去作を認識しているものを挙げてみます。」

連載作品作者過去作品
『極食キング』土山しげる『食キング』『喰いしん坊!』『極道めし』
『北の寿司姫〜江戸前の旬特別編〜』九十九森 / さとう輝『江戸前の旬』
『ビッグ錠のうろうろグルメン』ビッグ錠『包丁人味平』
『丼なモンダイ!』花形怜 / 吉開寛二『思い出の味 大陸食堂』
『グルメ探偵りょうじ』加藤雅史『ザ・シェフ』
『本日も酒日和〜ベストセレクション〜』ラズウェル細木『酒のほそ道』
『蜆庵発マエスチョロきくち まかなひ』蜆庵スタッフ*5『おせん』
『野良麺』富沢順『殺し屋麺吉』

「どうですか、このある意味豪華極まりないメンツ。あとここに雁屋哲と寺沢大介と西条真二が加われば日本の料理漫画史を単独で制覇できそうな勢いですよ。まかり間違って『ミスター味っ子II』が打ち切られるようなことがあれば、寺沢先生にはぜひ『食漫』で『喰いタンII』を連載していただきたい。」

「あと、もはや豪華なのかも定かではありませんが、コラムページも割と充実しています。久住昌之先生の『孤独の飲み飯』を筆頭に、なぎら健壱の食にまつわるエッセイ『なぎら健壱の好食一代男』、フードファイター・ジャイアント白田の串カツ店経営日記『ジャイアント白田の「しろたや」奮闘記』が脇を固める重厚な布陣。とにかく隙がない。コンセプトが統一されすぎているといいますか、突破力が強すぎるといいますか。とにかくお前ら、もっと先を争って『食漫』を読み漁るべきだと思います。」

*1:作中では名前が出ていない。『散歩もの』(isbn:9784594060800)の『原作うらばなし』で言及あり。

*2:『綺譚集』(isbn:9784488542023)所収。

*3:泉昌之名義。久住先生のアバターっぽい現代に生きる謎の野武士が、 B 級グルメについてぐちゃぐちゃいう話が主に収められた短編集。

*4id:xx-internet:20090913:p2

*5:きくち正太のアシスタント。

uraniouranio2010/01/14 19:29面白いエントリでした。
そういえば xx さんは昔、「日々の食事に楽しみを見出せない」「エネルギーカプセル欲しい」のような事を書いてたような気がするのですが、この頃の料理漫画への入れ込みは並ならぬように見えます。
これはどうしてなんでしょう? 自身に無いものなので補填してるんですかね? または単なる好みですとか。

screwscrew2010/01/15 02:12「夜行」は「世にも奇妙な物語」でドラマ化されていた件。
オチは少しアレンジされてたけど、あのオカズを食べる
順番への執拗なこだわりは上手く表現されてたと思います。

xx-internetxx-internet2010/01/15 07:00> uranio さん
『アイシールド21』ファンが実際のアメフトを好きかと言うと必ずしもそうではないので、俺のことはどうだっていい世界です。
まあ、闘・食・性など本能に根ざす分野は技術的進歩や専門特化が著しいので、体系として面白いですよね。

> screw さん
これですか。
http://yonikimo.com/db/public/358.html
残念ながら観ていませんが、評判いいですね。

mutumimutumi2010/02/09 17:50http://mqusumi.exblog.jp/i6/3/
久住さんのBLOGの中での「天むす」「ヒドイきつねそば」の辺りの記述も面白いです

食漫は近くの本屋になかったので注文してみようかと思います

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