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2010-03-14

[]『アホの壁』(筒井康隆、新潮新書) 『アホの壁』(筒井康隆、新潮新書) - イン殺 を含むブックマーク はてなブックマーク - 『アホの壁』(筒井康隆、新潮新書) - イン殺

アホの壁 (新潮新書)

アホの壁 (新潮新書)

「余人はどうか知りませんが、自分が筒井康隆ファンとして持っている恐怖のひとつに"筒井康隆が発狂したらどうしよう"というものがあります。狂気をテーマにしたドタバタ小説を山ほど書いていた筒井康隆が発狂する。これほど喜劇的な話はありませんが、もし仮にそれが現実になったとしたら。狂気を冷静に眺めていたはずの人が、いつのまにか狂気に取り込まれている、そんな狂気の底なし沼のごとき深さをわれわれは目の当たりにするのです。それはいつか来るであろう筒井康隆の訃報以上に恐ろしいことです。マジキチマジ怖い。」

「それはおそらく杞憂としても、もう少し現実的な恐怖シチュエーションとして"筒井康隆がボケたらどうしよう"というのもあります。老いた麒麟は駑馬にも劣るといいますが、劣るだけならともかく正気とも思えない発言を繰り返しはじめたらどうしよう。しかし老人と言える年齢になってから老人ボケをテーマにした小説を書いたり老人同士がブチ殺しあう『バトル・ロワイアル』のパクリ小説を書いていた筒井康隆のことだから、そのボケすらも身を張った高度なギャグかもしれない。正気と狂気を見分けることはたいへんに困難です。どうするどうするどうする、君ならどうする?」

「だいたいそんなような、うすぼんやりとした不安を感じさせるところが『アホの壁』の面白さです。
いわゆる一般論を語るときに自分のことを含めないのは端的に言ってアホであり、ネットスラングにいわゆるところのブーメランです。しかしアホについて語る者がそのアホさ加減を無視するということがあるだろうか。それも年季の入った職業的嘘つき*1が、よりによってそんな初歩を忘れることがあるのか。まさかな……、いやひょっとして……。
ということを考えながら読むと、この本は非常にスリリングです。一例。」

なぜ女はこうなのか。むろん男性への甘えもあるだろうしナルシシズムもあるだろう。だがそれだけでは片づかない、もっと根本的な、女性特有の脳の機能が関係しているのではないか。

一般的には、人間の左脳と右脳は脳梁によって連結されているが、女性の場合は男性と比較してこの脳梁が太いとされ、つまりは、単純でステレオタイプな考え方によると、分析や計算など論理を捉えるとされる左脳と、感覚や直感やイメージを捉えるとされる右脳の連結が比較的スムーズに行われると言われている。だから女性の場合、理性は理性、感情は感情と判然と分けられることなしに、両者が強く結びついているのだと言われる。

しかしこれは現在の脳科学ではっきり証明されたわけではないので、ここは俗流科学に従う他ないのだが、女性特有の思考感情と言われるものはどうやらこのあたりから来ているのではないかと考えられる。

『アホの壁』 第一章 人はなぜアホなことを言うのか 六 真のアホによるアホ P39

「"現在の脳科学ではっきり証明されたわけではないので"に赤線を引いて読むとよいでしょう。わたしの中の脳内会議が「これはボケだよね」「どっちの意味で?」と相談を始める素敵な一節です。んー。」

「ざっくり言うと、人がなぜアホなことをするのかのひとつの答えとして、この本ではタナトスを持ち出しています。自己破壊衝動の変形として人はとてつもなくアホなことを言ってしまうのだと。これを読んで思い出したのが『巨船ベラス・レトラス』終盤に出てきたある台詞。」

澄子は強い眼で錣山を見つめ、口もとを泣き出しそうに歪めながら言った。

「現在わたしが努力して書いている作品を無意味だとおっしゃっています。わたくし、錣山先生からそんなお言葉を聞かされるとは思いませんでした。失礼ですが錣山先生はお歳を召したのだと思います。一般読者の啓蒙を口実に、過去の実験や冒険をより楽な作業で繰り返そうとなさっています」

『巨船ベラス・レトラス』P204

「先鋭的な実験作品を書いている若手美人作家から、作者の分身臭が濃密に匂う錣山先生に向けて吐き捨てられた言葉がこれですよ。これをもって筒井康隆が若者から痛烈に DIS られたいという欲望を抱えていると見るのは妄想でしょうか。まあ妄想でしょう。しかしわたしの中に刻まれたこのアングルは今もって覚めやらず、『アホの壁』全体が強烈な誘い受けとして認識されてしまいます。なんといいますか、まことにもってアホ万歳でござる。」( TRF 『CRAZY GONNA CRAZY』を聴きながら)

*1:余談。作家が失言するとよく"作家なのに論理的でない"という批判を受けますが、その"なのに"の論理性がいまいち分からない。感情まかせの仕事がしたいから芸術家なんじゃないの?

masamasa2010/03/16 21:47『アホの壁』を読了した私の心に最初に浮かんだのは「ぼくをみて!ぼくをみて!ぼくのなかのアホがこんなにおおきくなったよ!」と叫ぶ筒井先生の姿でした。
SMクラブの常連に大会社の重役が多いのと同じで、周囲に追従と諦念の笑みが増えていくと無性に誰かに叱って欲しくなるのかもしれません。本物の死を間近に控えタナトスが引き起こす擬似死で予行演習をしているのか、或いは死後に出会う母親にまた叱られるのを夢みるあまりのフライングなのか。

xx-internetxx-internet2010/03/18 07:37文中で言われる"甘えによるアホ"に近いですね。
「俺ぐらいの立場になるとこんな発言もお茶目だ」とか「相手が自分をどこまで許せるかを暴言のレートを上げていって試す」とか。
またこれがそのままメタに当てはまるものだから、それはひょっとしてギャグで言ってるのかと不安になってきます。

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