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イン殺 RSSフィード

2013-04-30

[]『放課後のトラットリア(1)』(橙乃ままれ、水口鷹志) 『放課後のトラットリア(1)』(橙乃ままれ、水口鷹志) - イン殺 を含むブックマーク はてなブックマーク - 『放課後のトラットリア(1)』(橙乃ままれ、水口鷹志) - イン殺

放課後のトラットリア 1 (メテオCOMICS)

放課後のトラットリア 1 (メテオCOMICS)

「基本 Web 連載。」

しばらく違う話をします

「『信長のシェフ』(梶川卓郎、西村ミツル)という漫画がありまして、あの作品も割とウキウキで読み進めたわけですが、あれはあれで調べて作ってあって好きなのです*1。が、当初設定を聞いて期待したような味とは違ってました。担々麺が食べたいときにタンメンを食べてるような惜しさがそこにはありました。
何でかというと、現代人が信長全盛の戦国期にタイムスリップするという設定から、料理的オーバーテクノロジーによる無双歴史改変を期待していたからです。未来の力が過去に移動したら、そりゃ精霊大王ドラゾンビ様並のチート能力で地を治めることも覆すことも星を動かすこともできるはずです。が、幸か不幸か『信長のシェフ』主人公のケンには料理知識、歴史知識は全て健在なれど出自と現在の生活についての記憶が欠落しているというリミッターが掛かっており、現代に戻りたい! 生活を取り戻したい! それが駄目ならこの世界でせめて幸せに暮らしたい! という意志のベクトルが欠けておるわけです。承太郎さんで言うとスタンド DISC は刺さってるけど記憶 DISC が半分抜けてる状態ですね。いきおい、ご当地の歴史事実を叩き壊してでも幸福王に俺はなる、というドリフターズ的動機がケンにはないので、生き延びるために料理知識を使うことは多々あれど、寒冷地でジャガイモの栽培をさせて兵站を根本的に改善するような軍師行動はあんまり取らないのですね*2。青木昆陽、技を借りるぜ! って言いながら甘藷の栽培を推し進めたりとかも。そういうのが読みたいのかと言われると、実現不可能な欲望を全力で前に押し出す行為は反社会的であるという持論*3に抵触するので頭をかいて恥じ入ることしきりですが、まあちょっと読みたいですね。どこまでやれるのか、ただそれだけを俺は知りたいですね。」

『放課後のトラットリア』とは

「そこでオーバーテクノロジーによる蹂躙といったら当代随一の橙乃ままれ先生です。『まおゆう』ははんなりと加工されたチャンピオン RED 漫画版しか読んでないのですが、ジャガイモとトウモロコシはチートですね。食料や料理が本題でない『まおゆう』であの蛮勇なら、現代の料理部女子高生がファンタジー世界に転移などしたらいったいどんなことになってしまうのか。北海道の寒村でヒグマが無双した実録小説を読むような気分でこの作品を手に取ったわけです。」

「結論から言うと、一巻の時点ではそれほど羆嵐が吹き荒れてはおりませんでした。予想外。」

(ここから一巻の内容に触れます。)


「心から意外だったのは、なんと異世界人の一人が自身の荒ぶる革命力に自覚的だったことです。これは漫画パートだけだとそれほど明確に描かれてはないんですが、原作者書き下ろしの短編『語られない言葉で語る約束』だとそこがメインテーマとして描かれてます。」

「異世界に転移した料理部四名の内訳は

  • お気楽極楽で呼吸するように革命力を使う主人公(パン担当)
  • 革命とか興味ないホームシックな下っ端(魚料理担当)
  • 革命とか興味ない主人公大好きっ子(肉料理担当)
  • 革命力を最大級に秘めた深謀遠慮の部長(関西人)

という構成ですが、書き下ろし挿話の内容は、高校二年の部長さんが異世界での庇護者である地方領主様と語り合い、そのうち領主様が部長ひいては異世界人の高い教育レベルと統制されたコンプライアンスに気づき、彼女たちの革命力をどのように Win-Win の関係で運用していくかを軽い鞘当てをしつつ語り合うという大変文化の香り横溢するコンテンツとなっております*4。そこで示されるのは、少なくとも領主様がそれと感じ取る部長の意志は「能力はあるけど全開にするとそちらの世界にむやみやたらと影響与えちゃうかもしれないし、それで目立って拉致監禁とかされてもやだし、お互いのために相互不干渉でどうすか」といったものです。」

彼女は、おそらく、この世界に情けをかけたのだ。

『放課後のトラットリア(1)』P186

「文化の違いっすねー。シムアースでモノリスをばらまくのを手加減するプレイヤーみたい。
革命力が吹きすさぶ作品はいくつかありますが、こういう自粛を最初にやってみせるものって他にあるんでしょうか。近年のロボットアニメの主人公ならしばしば「絶対に戦いたくないでござる」的なことを言いますが、石川賢なら戸惑うことなく世界を変える風にな*5った末に江戸時代の空を木造戦艦が埋め尽くすだろうし、世界史上の危険人物どもに One more time,One more chance を与えた『ドリフターズ』だっていまさらそんなこと気にしなっシャブルでしょう。料理人が迫害されている『食戦記』(id:xx-internet:20091103:p1)だってオーパーツ料理の出し惜しみはしません。やっぱり『まおゆう』での異世界蹂躙があまりにも据物斬りだったことを反省してこういうスタンスになったのかしら。」

「しかし金槌を持てば全てが釘に見えるのが人情というもので、あふれる革命力を思うさま未開もとい発展途上世界にぶつけてみたいスペイン人 in インカ的誘惑には作者も読者も作中人物もうずうずしてます。しているはずです。それを一巻の時点でこうして抑えこむということは、つまりあれだ、開かんと欲するならばまずは閉じるべしの形になるんじゃないでしょうか最終的には。ほのかな期待を抱きつつ次巻を待つ。」

*1:椿から油を採ってフリッターを揚げるところとか。

*2:戦場に持ち運べて後から煮ると湯漬けになる焼きおにぎりくらいは作ってましたが。

*3:『国民クイズ』から学びました。

*4:異世界人のモノローグを借りて語られる「現代の文化レベルは異常」というこのくだり、アヴドゥルさんが「DIO の言葉は心がやすらぐんだ、危険な甘さがあるんだ、だからこそ恐ろしい」と言っていたあれに近い感じを受けます。通常の生活ではほとんど得られることがない"教育を受けたことへの報酬"をやぶから棒に与える内容で、思わず「何が目的だ!」と身構えてしまうといいますか。教育は与える方にもコストがかかりますが、受ける方だってそれ相応のコストを支払うわけで、しかも学習したということ自体が目立って報われることは少ない。実際にはメリットを薄く広く享受してるはずですが、悪くすれば「知識で武装するなんて卑怯者のすることだ」てきな対抗反応を受けることだってあります。そういうストレスがくすぶってるところに領主様の甘言がヒットすると、結構なパンチになるんではないかと。

*5:歌詞が命令形な理由は我々が石川賢ではないからです。できる者はやる。できない者は教える。

赤毛赤毛2013/05/01 16:46お久しぶりの更新、お疲れ様です
イン殺氏的には、まおゆうは“あり”だったのですか
自分はどうも、『据物斬り』っぷりが鼻についてしまって駄目でござんした。
技術は段階的に発展していくものだから、継ぎ木的にオーパーツ持ってきても、一時的に効果は上げても根付かんだろ、とついマジレスしちゃうのです。
……ジャガイモ飢饉が起こって、主人公勢の努力が裏目に出るとかやってくれりゃ文句無しの作品だったのに……

xx-internetxx-internet2013/05/02 06:38> 赤毛さん

文中に書きましたが、チャンピオン RED 版だけで原文は読んでないです。
最初にネットで話題になったときに何となく手が出なかったせいで、その後ヒットした頃には噂でだいたいのタネを知ってしまっているという不幸な出会い方をしてしまいました。
(実はシュタインズゲートも同じ)

内容については積極的にアンチということはなく消極肯定派です。
最近 http://togetter.com/li/494217 を読んだんですが、『まおゆう』のエポックメイキングな点もマジンガーに対するガンダム的な「リアル」さだと思うので、それ自体で整合性が取れないのはしゃーないんじゃないでしょうか。元々ワンアイディアだろうし。

ジャガイモ飢饉はザンボットとか V ガンダム方向に舵を切ることになりそうで、まっこと娑婆苦とは手に負えないものでございます。どうせ制御不能になるならゲッターロボがいいなあ。

匿名希望匿名希望2013/05/05 22:39http://gurucomi.sakura.ne.jp/
今日知ったのですが(手遅れ)
飲食総合同人オンリー同人イベント 
グルメコミックコンベンション
なるイベントがあった模様です(5/3)

いかようなイベントであったか、知る由もありませんが…
第二回があったらぜひにとおもう今日この頃であります

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